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森みゆきwith ドリームシンガーズ 夢を実現した歌手と少女たち

ドリームコンサートVOL. 3

森みゆきwith ドリームシンガーズ
夢を実現した歌手と少女たち

4月6日、森みゆきドリームコンサートが催された。NHK「お母さんと一緒」の歌のお姉さんから始まり、歌手として20年以上のキャリアを持つ森みゆきさんのミシガンでのオンステージ。JBSD青年委員会の主催で、2004年、2006年に続く第3回目となった今回の特徴は、ミシガン在住の子供たち‘ドリームシンガーズ’の出演。ドリームシンガーズは森みゆきさん自らがこのコンサートを目標に集中プロジェクトとして立ち上げ指導してきた。幅広い年齢層の18人の歌い手たちだ。楽しく発表する域ではなく「パフォーマーという意識を持たせたい」と指導しただけあって、堂々としたパフォーマンスを見せた。
‘歌で楽しむ今昔物語’のテーマで繰り広げられたプログラムは、森みゆきさんが華麗なドレス姿で『みかんの花咲く丘』『小さい秋みつけた』の懐かしい日本の愛唱歌をしっとり歌ってスタートした。挨拶として、ミシガンでのドリームコンサートが3回目を迎えた喜びや感謝が伝えられた後、歌について解説した。『みかんの花咲く丘』は60年以上前に生まれ、『小さい秋みつけた』は昭和30年に誕生し37年にボニージャックスが歌ってレコード大賞童謡賞になったことなどを話した。その後、デビュー当時の「お母さんと一緒」の写真や、はつらつと歌っている映像がステージ上の大画面に映し出された。再び生演奏に戻って『バナナのおやこ』や『ぼくのミックスジュース』など「お母さんと一緒」の定番ともいえるポピュラーな曲が次々と続いた。「お母さんと一緒」の公開番組さながら、観客も振りや手拍子に加わり一体感のあるムードが生まれた。「『お母さんと一緒』で歌いこんだ曲を歌うと、つい体が動く」とトークの中で話したように、はつらつとした振り付けでエネルギッシュに歌った後、一変して、森みゆきさん作詞の「お母さんっていいね」を母親のたおやかさと優しさをたっぷりに歌い上げた。歌には、歌詞の内容や、口ずさんだ頃の自分に人を引き入れる力があることが実感される。

ドリームシンガーズは、揃いの赤いTシャツで足並みそろえて登場。元気に『歌えバンバン』からスタートし、『ずいずいずっころばし』『かごめかごめ』など、わらべうたを遊ぶ動作をつけて歌った。5歳から高2までと年齢がまちまちな18人が遊ぶ姿は一見振りつけっぱいが、4ヶ月のレッスンを通してすっかり姉妹のようになった“本物”の睦まじさ。年の差を越えて遊ぶ機会が減っている昨今、ほほえましい交流の姿に映った。年上の子達が選曲した『イッツマイソウル』では年の小さい子たちも体全部を使ってボディーパーカッションを披露。みゆきさん作詞作曲の『Love Your Life』は、みゆきさんも加わって手話を添えて豊かに歌い上げた。

再びみゆきさんの独唱に戻って、時代を越えて親しまれている『時代』(中島みゆき作)や童謡など数曲が続いた。プログラムの最後には、このコンサートのために作ったという「今、ただ素直になればいい。今、ただ歩き出せばいい。」と前向きな歌詞の曲『今がチャンス』を明るい歌声で届けた。アンコールに応えて『世界に一つだけの花』をドリームシンガーズと熱唱。みゆきさんは大勢の子供たちからの花束を受け取った後、「9年間ミシガンで過ごすことができ、幸せです。いっぱい出会いがありました。駐在の方が多いので別れが多いですが、新しい出会いや新しいことに向かってガッツで生きていきましょう。」と思いを伝えた。「See you again  輝く微笑み忘れない」という歌詞の『元気と元気のハーモニー』のように会場が一つになった雰囲気の中、客席通路に広がったドリームシンガーズと観客が手にした蛍光ペンライトの光が歌に合わせて揺れた。「日本のことを忘れずに日本を大事に想う心を伝えていきたい。」と言葉を添えながら歌い、盛大な拍手の中で幕が下りた。

終了後の楽屋で、ドリームシンガーズの子供たちに感想を尋ねたところ、どの子も「楽しかった!」と生き生きとした表情で答えた。最年長にあたる高校2年生の内山田怜美さんは「快感でした!」「達成感がありました。」と顔を輝かせた。年齢が離れている子たちとのレッスンについて、「初めはコミュニケーションが難しかったけれど、2週間目からくっついてくるようになって嬉しかった。年下の子の方が歌詞を先に覚えて驚かされました。やる気があれば年なんて関係ないと分かりました。」と話す。中学生の時から歌手になりたいと願い、無理かと諦めかけたけれど、このプロジェクトで‘舞台にのってみたい’という夢を果たしたという。「舞台に立ち続けたい!」と躊躇無く語った。

コンサートが終わった数日後、森みゆきさんに感想や今後の抱負について話を伺った。

ドリームシンガーズのゴールであるコンサートを終えてのご感想は?

パフォーマーとしての出来は80点という印象ですが、子供たちはかなりがんばって、1回目としては素晴らしいものになったと思います。特に心の成長が大きく、楽しみに練習を続け、
一生懸命になったという点では、想像以上のものがありとても嬉しく感じました。
歌詞や振付を覚える点では、かなりレッスンは厳しかったのですが、メンタル的な部分の指導も多く取り入れてきました。発表会ではない“ステージ”に立つということはどういうことか、どういう自覚が必要かを何回となくディスカッションしました。「私が歌う時に楽しそうなのは何故か?お客さんに聴いて頂けることに幸せを感じ、歌うことでさらに元気が出てきて、歌の内容を心から表現するために演じているから」といった話もしました。子供たちなりに消化して、心から楽しむようになったことは素晴らしいと思います。年上の子達は全員のポジションを絵に描いて確認するなど責任感を持ってリーダーシップを発揮しました。小さい子たちも、5、6歳の子にとっては高いレベルの内容を求めてきましたが、出来るようになろうと挑戦してきました。自分からやる気を出したからこそ、4月6日のコンサートがゴールで終わってしまうのではなく、まだまだ燃やし続けたいという気持ちをもっているのだと思います。大人が必死になれば、その思いは小さな子供たちにも通じるのだと実感しました。

プログラムの冒頭に「将来、国際的に生きていくであろう子供達にクオリティーの高い見聞、経験のチャンスを」というみゆきさんのメッセージが載っていましたが、このプロジェクトで、プロ歌手である森みゆきさんの指導を受けたという他に、具体的にどんなことがありましたか。

キーボードを担当した徳家敦氏(TOYA)を始め、世界的に活躍するミュージシャンによる演奏と共演できたことはめったに出来ない経験ですし、音響や照明などの方とリハーサルをする中で、多くの人が係わって1つのプロジェクトができることが分かったと思います。良いパフォーマンスを観客に届けるためには、我慢することや役割を果たすこと、自分を高めることなどが必要ですから、精神力が付きました。テクニカルな部分は4ヶ月間では限界がありましたが、たくさんの貴重な経験をしたと思います。
習い事でも、ただなんとなくではなく、極めようとしていく中で色々なことが得られるのだと思います。例えばミュージカルなどの一流のものを見ることやライブを見ることで、子供にも違いが分かるものですし、伝わってくるものがあるはずです。

ドリームコンサートの今回のテーマ“歌で楽しむ今昔物語”には、曲の年代が幅広いというだけでなく、舞台で歌うことを夢見たかつての少女と現在の子供という意味合いもあったのでしょうか。

ファミリーコンサートということで、小さい子供が楽しめる歌だけでなく、知ってほしい日本の名曲も入れましたし、大人も楽しめるようにと選曲しました。何年経っても残っていく歌がある素晴らしさを伝えたかったのです。
25年前の映像を写したのは、夢を持っている、あるいは持とうとしている子供たちに、夢はかなえていくことが出来ると伝えたいという思いがありました。

今後のこのドリームシンガーズの方向や、他の‘ドリーム’企画について、もう考えがおありですか。

ドリームシンガーズは、第3回ドリームコンサートの舞台に立つことを目標に立ち上げましたが、今後はいろいろなイベントや日本を紹介する場で、日本の歌を歌っていけたら・・と思っています。いつも全員ではなく、年齢や個性に合わせた活動も考えています。将来的にはコーラスグループとしてだけではなく、伝統的な音楽演奏なども取り入れてみたいです。賛同してくださる方が増えたら、いろんな可能性が広がっていくと思います。
コンサートに関しては、今まで3回のドリームコンサートは、ファミリーコンサートとして皆が楽しめるものを考えて組み立ててきましたが、今後は、子供向けの「お母さんと一緒」的なものと、大人向けのものを分けてターゲットを縛ることも考えています。現地の地の人たちにも楽しめるファミリーコンサートを持つとか、日本の曲に英語の歌詞をつけたり、日本とこちらの音楽のコラボをするとか・・・、色々なことにチャレンジしていきたいです。

コンサートの最後に「日本を大事に」と声高におっしゃっていましたが、そういった思いは渡米してから強くなったのでしょうか。

アメリカでの生活が9年目を迎え、年齢も重ねて、客観的に見られるようになって日本の良さが実感を伴って分かるようになりました。それに、日本にいた頃には見えなかったことが見えるようになりました。外から見て見え方が違うというばかりではなく、日本にいた頃は暇も無かったせいです。それと同時に、苦しいと思っていることも、外に出てみると大したことではないということも気づきました。見方を変えるといろんな可能性がでてくるものです。‘自分にできること、自分にしかできないこと’を見つけていきたいと思っています。『今がチャンス』という歌を今回のコンサートに合わせて作りましたが、そういう思いが籠められています。私にとっては歌で夢を叶えるお手伝いをしたり日本の良さを伝えることが、今のチャンスです。チャレンジでもあります。ちょっとキザですが、自分のためであり、誰かのために輝いていたいなと思います。

森みゆきさん略歴
佐賀市生まれ、国立音楽大学卒業。1983年~87年 NHK「おかあさんといっしょ」歌のお姉さんとしてレギュラー出演。以降、全国各地におけるファミリーコンサートを中心に活動し、数々の音楽番組、テレビCM、ドラマ、情報番組などに出演し、現在に至る。
オーケストラとの共演も多く、童謡、叙情歌、ポップス、映画音楽、ミュージカル音楽、手話を取り入れた自作のオリジナル作品、絵本の「読み聞かせ」を含めたライブも展開中。
現在も日本のオーケストラとの共演や日米両方でのコンサートや講演などで活動中。
ホームページアドレス https://miyukids.com/

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